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6.確率

得点の確率が高いのはどっち?
Snake君はドリブルが得意です。Jason君はシュートが得意です。さきほど終わった試合についてみんなで話し合っています。

Snake君「あのとき、Novyが僕にパスしていたら、絶対に得点したのに。」
Jason君「いや、俺にパスしていたら、絶対に得点していたぜ!」
Novy君「2人とも、サッカーに絶対なんてないよ。だから面白いのさ。」
Snake君「ふざけるな、Novy。あのときお前がミスして相手にボールを取られたんだぞ。」
Jason君「そうだ。お前が悪い。」
Dragonコーチ「でも、どっちにパスしていたら得点の可能性が高かったのだろう?」
Jason君「そりゃ、俺に決まってますよ、Dragonコーチ。」
Dragonコーチ「では、あのときのプレーを整理して考えてみよう。」

あのときのプレーとは図1のような状況でした。
図1:Novy君がボールを持っているときに、ゴール前にSnake君とJason君がいる状況の図
図1
このような状況であれば、今までの経験から言って、以下のような確率で得点できただろうと考えてみます。

もしSnake君にパスが渡っていたならば、Snake君はドリブルが好きなので、2割方シュートで8割方ドリブルしたとします。そして、
      すぐシュートをしたら25%の確率で得点したとします。
      得意のドリブルをしてからシュートしたら30%の確率で得点したとします。

もしJason君にパスが渡っていたならば、Jason君はシュートが好きなので、9割方シュートで1割方ドリブルしたとします。そして、
      すぐ得意のシュートをしたら35%の確率で得点していたとします。
      ドリブルをしてからシュートしたら15%の確率で得点したとします。

さて、どちらにパスが渡った方が得点の確率が高いでしょうか。
少し自分で考えてみてください。

・・・
・・・
・・・

さて、どのように比較すればよいでしょうか。
単純に個々の確率の平均を出せば、Snake君の方が確率が高そうに見えます。
Snake君:(0.25+0.30)/2 = 0.55/2 = 0.275
Jason君:(0.35+0.15)/2 = 0.50/2 = 0.250
この場合はSnake君の方が得点の確率が高いようです。
しかし、Snake君は2割方シュート、8割方ドリブルをし、Jason君は9割方シュート、1割方ドリブルすることを考えなければなりません。
とすると、こうなります。
Snake君:0.25×0.2+0.30×0.8 = 0.05+0.24 = 0.290
Jason君:0.35×0.9+0.15×0.1/2 = 0.315+0.015 = 0.330
こうすると、Jason君の方が得点の確率が高いようです。
さきほどの平均よりも、それぞれ得意なプレーに偏る分だけ確率が高くなっていると解釈できます。
つまり、Snake君の方が平均の得点能力は高いと言えるかも知れませんが、この状況では、Jason君にパスが渡った方が得点の確率は高いと言えそうです。

ワンポイント(1)
確率と統計の違い。
確率は偶然に対する事柄の確からしさを考える学問です。これに対して統計は、確率を基礎として、ある事象がどのような傾向にあるかを考える学問です。例えば事象の平均値やばらつき具合を調べたりします。

確率と成功率の違い。
それから、確率は偶然に対する事柄の確からしさのことですので、成功率とはちょっと意味が違います。さいころを振って1の目が出れば成功と考える場合は、この成功率は偶然に対する事柄と言えますが、シュートの成功率は、努力によって改善することができます。つまり必然的に成功率を変えることができると言えます。ですが、今論じているのは、今までの経験=最近の過去の記憶(データ)を元にした成功率が、さきほど終わった試合にも適用できるだろう、という前提に立っています。つまり、もしかしたら急に上手くなっていたかも知れないが、それは考えないで、現時点では任意に変えることのできない成功率=偶然に対する事柄=確率として扱っています。

樹形図で考えよう
今度はもう少し複雑な状況を考えましょう。

例題1  相手陣地内でボールがNovy君のところに来ました。前方にはヘディングの得意なJason君がいて、斜め前方のライン際にはSnake君がいました。
図2:Novy君がボールを持っているときに、前方にJason君、斜め前方のライン際にSnake君がいる状況の図
図2
そして、今までの経験から言うと、以下のようになるとします。
Novy君のスルーパスが成功する確率:0.3
Novy君のサイドへのパスが成功する確率:0.65
Jason君がスルーパスを受けた場合にヘディングする確率:0.2
Jason君がスルーパスを受けた場合にヘディング以外のプレーをする確率:0.8
Snake君のセンターリングが成功する確立:0.4
Jason君がセンターリングを受けた場合にヘディングする確率:0.4
Jason君がセンターリングを受けた場合にヘディング以外のプレーをする確率:0.6

条件がたくさんあって複雑です。このような場合には、樹形図を描いて整理することができます。
樹形図とは図3のような枝分かれの図を言います。ちょうど生物を分類する系統樹のような形をしています。ここに、確率の対象となるすべての事象を作成するのです。
では
例題1  についての樹形図を描いてみます。
図3を見て下さい。
図3:例題1の樹形図
図3
樹形図の根から成功で終わっている事象までを掛け算して、すべてを足したものから全体を割り算すれば確率が求まります。
ただし、ここでの全体は1ですので、割り算しても値は変わりません。ですが、確率は取り上げたい事象/全体の事象だということは忘れないようにしましょう。
では、Jason君へ直接パスする場合とSnake君経由でJason君へパスする場合の確率を計算してみましょう。
Jason君へ直接パスする場合
ヘディングのシュートが成功する確率:0.3×0.2×0.8=0.048
ヘディング以外のシュートが成功する確率:0.3×0.8×0.2=0.048
合計:0.048+0.048=0.096
Snake君経由でJason君へパスする場合
ヘディングのシュートが成功する確率:0.65×0.4×0.4×0.8=0.0832
ヘディング以外のシュートが成功する確率:0.65×0.4×0.6×0.2=0.0312
合計:0.0832+0.0312=0.1144

よって、Snake君経由でJason君へパスする方が得点の確率が高いと言えそうです。
やはり、Jason君の高い成功率であるヘディングを活かす方法を取った方がよい、ということでしょうか。

それから、確かめのために失敗する確率も計算しましょう。
失敗する確率は全体-成功する確率、ですので、以下になると予想できます。
Jason君へ直接パスする場合
全体:1
成功する確率:0.096
失敗する確率:1-0.096 = 0.904

では実際に樹形図から失敗する確率を計算してみましょう。
スルーパスが失敗する確率:0.7
ヘディングのシュートが失敗する確率:0.3×0.2×0.2=0.012
ヘディング以外のシュートが失敗する確率:0.3×0.8×0.8=0.192
合計:0.7+0.012+0.192=0.904
どうやら正しいようですね。
それにしても、スルーパスの失敗する確率が70%もあるというのは、とても痛いことですね。やはり最初のプレーは安全策が良いと言えるかも知れません。

Snake君経由でJason君へパスする場合
全体:1
成功する確率:0.096
失敗する確率:1-0.1144 = 0.8856

こちらも樹形図から失敗する確率を計算してみましょう。
サイドへのパスが失敗する確率:0.35
センタリングが失敗する確率:0.65×0.6=0.39
ヘディングのシュートが失敗する確率:0.65×0.4×0.4×0.2=0.0208
ヘディング以外のシュートが失敗する確率:0.65×0.4×0.6×0.8=0.1248
合計:0.35+0.39+0.0208+0.1248=0.8856
こちらも正しいようですね。

このように、樹形図を描くことで事象を整理して考えることができます。

ワンポイント(2)
データを収集してみよう。
ここ10年ぐらい前からプロのチームなどでは、あらかじめ対戦相手のデータを記録して、少しでも対戦時に有利にしようという試みが見られます。また、サッカーの戦術的な理論を裏付けるためにプレーなどのデータを記録することがあります。
このように色々な事柄を記録し、分析するための手段として確率や統計が役に立ちます。ですので、どのようなデータを収集すれば役に立つかを考えてデータの収集に挑戦してみましょう。例えば、試合中に何本のパスが連続してつながったのかを記録しておけば、後日の練習の目標にすることができます。
ただし、注意しておきたいのは、収集したデータをどのように使うかは自分達で判断する必要があるということです。収集したデータを参考程度にするのか、あるいは絶対の基準とするのかは、それぞれのデータの性格を把握して判断する必要があります。つまり、与えられた数字を鵜呑みにするのではなく、それがどのようなデータであるかをきちんと把握する必要があるのです。

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Novy君「結局、Jason君にパスした方が良かったのか。でも、試合中にそんな面倒な計算はできないよ。」
Dragonコーチ「そう。試合中にいちいち計算できないね。だから、試合の後に試合での出来事を思い出して、客観的に評価することが大事なんだよ。そうすれば次の似たような場面で活かせるよね。」
Jason君「それよりも、Novyは相手にボールを取られないようにしろ!」
Novy君「あれは、たまたまだよ。確率で言えば1%ぐらいかな。」
Snake君「ふざけるな!お前はいつもボールを奪われるじゃないか。」
Novy君「ひーーーん!またいじめられた。Dragonコーーーーチ!」

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